ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第一章 決断 第17

 玉座の前に出でてかがみむと、エジプトに連れて来られたヘブライ人が、しきたり通りに礼をささげるのをご覧になって、少し驚かれたとおっしゃって下さった。陛下は言葉をつづけられた。
 お前は夢の解き明かしが得意だというではないか、私の夢を解き明かしてみよ。
 私は驚いて顔を上げ周囲を見渡すと、陛下の隣に献酌官がおられるではないか。私を見る視線が喜んでいるのか申し訳なく思っているのかわからなかった。
 おそらく二年は経っただろう。多くのことが、そう、その瞬間、目の前を様々なことが通り過ぎていったような気がする。
 陛下の怒りを買い、料理官と共に入れられてきた初日の記憶。監獄生活での苦しさを訴えていた時の姿。夢の解き明かしを聞いて喜んでおられた姿。そしてあの日、陛下の召しを受けて出て行かれるときの後ろ姿。
 すぐに走り寄って、なぜ今まで何の音沙汰もなかったのか問いただしたかったが、その表情を見てすべてを許すことにしたよ。悔しさよりも嬉しさがこみあげてきた。すぐにでも近づいて手でも取りあいたかったが、その時はただ笑顔で挨拶を交わすしかなかった。そう、すべては神が計画されたことよ。誰を非難することができようか。
 初めてお目にかかる陛下のお顔は、ひどくやつれたように見受けられた。お言葉によると、夢を見られたのだが誰も解き明かしができないとのこと。その夢というのがこうだ。
 夢の中で陛下はナイル川沿いに立っておられたが、美しく脂えた七頭の雌牛が川から上がってきて牧草をはんでいると、その背後から醜いやせ細った七頭の雌牛が川から上がって来て、先にいた七頭の雌牛を食べてしまったそうだ。陛下は一度、眠りから覚めた後、また夢を見られた。一本の太い茎に七つの穂が実ったのだが、後から弱った茎から七つの穂が出てきて、前の太い茎に実った穂を飲み込んでしまったと仰った。
 陛下からこの言葉を聞いた時、私は確信した。これは推定や憶測ではない。自ら悩むとか考える間もなく、神は私に知恵を下さったのだ。どうして疑うことができようか。疑問の余地がないというのはもう一つ理由がある。それは、神が陛下に二度も夢をお見せになられたという点だ。これは明らかに成し遂げようとされる神の確固たる意志を示すものだ。
 これほど明快な意味をこれほど聡明で博学な方たちに解けないということが不思議でならなかったよ。
 そこは偉大なる陛下の御前。下手をしたら、いつ首が飛ぶかもしれない席だったのだが、ためらう私の考えとは裏腹に口はすでに動いていたのだ。

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