第二章 葛藤 第1話
登場人物
ツァフェナテ・パネアハ(ヨセフ):エジプトの宰相
通訳
警備兵1・2・3
ヨセフの兄たち:ルベン、シメオン、レビ、ユダ、ダン、ナフタリ、ガド、アシェル、イッサカル、ゼブルン
場所
エジプト宰相の謁見室
- 静かな音楽が響く
-
幕が開くと、左側の高いところ椅子が置かれており、その前付近に通訳と警備兵2〜3人がいる。右側からルベン、シメオン、レビ、ユダ、ダン、ナフタリ、ガド、アシェル、イッサカル、ゼブルンの順序で周辺をキョロキョロしながら登場する。
ナフタリ
:(ダンを見て)ここが、エジプトの宰相が住んでいる城なのか?すごいな。目がクラクラしそうだ。すげえ。あの彫刻を見てみなよ。こんなにすごいところは初めてだ!
ダン
:静かにしろ!声が大きすぎる!おまえ、ここをどこだと思ってるんだ。お前はどこへ行っても落ち着きがない。おとなしくしてなさい。ここで下手したら殺されるかもしれないんだぞ。
ナフタリ
:(ダンを見て)ところで、宰相という人は一体どうしてオレたちに会いたがってるんだろう?ここに食糧を買いに来た人たちに全部会ってるのかな。エジプトの宰相って、そんなに暇なの?
ダン
:うむ、実を言うと、オレもそれがちょっと引っかかってるんだよ。ほかの人たちは倉の方でお金を払って食料を買ってただろう?なのに、どうしてオレたちだけこんなところに連れてこられたんだろう。おい、ナフタリ!お前、また妙な事してないよな?
ナフタリ :何言ってるんだよ。そんなはずないだろ。一体どうなってるのかさっぱりわからないよ。
ダン :(ユダに向かって)ユダ兄貴、大丈夫でしょうね。何もないでしょうね?
ユダ
:さあ、私もそれが気になってるんだ。何が何だかさっぱり分からない。私たちをどうにかしたいのなら、さっさと牢に入れてしまえばいいものを、宰相が直々にお会いになりたいとおっしゃるとなると、悪いことではないような気はするのだが…。
ルベン:(ユダを見て)そうだろう?ユダ、そうだよな?大したことないよな?ボクたち、無事に帰ることはできるだろう?
- ナフタリとダンはルベンが気に入らないという風に舌打ちをして、ルベンと反対の方を向く。
ユダ :はい、ルベン兄さん。大丈夫です。あまり心配しないでください。
シメオン
:(ルベンを見て)ほら、ルベン兄さん。大丈夫ですよ。俺たちがいるでしょう。何かあったって大したことないですよ。ま、いざとなりゃあ、このシメオンとレビがいるじゃないっすか。大船に乗った気持ちで、うちらの後ろをちょろちょろとついて来てくださりゃあいんですよ。(レビの方を見る)そうだろう?弟。
レビ :シメオン兄さんの言うとおりだ。他の奴らはともかく、オレたちを信じて下さい。フフフ。
ルベン :(シメオンを見て)そ、そう…そうだよな。君たちを信じるよ。さ、さっきおしっこをして来たんだけど、また行きたくなってきちゃったな。
シメオン
:まったく…兄さん、あの宰相かなんかが俺たちに言いたいことなんてそんなにないでしょう。どうせ、すぐ終わるだろうから、ちょっと我慢しなさいよ。
警備兵1 :皆の者、静まれ!ツァフェナテ・パネアハ宰相閣下にあらせられるぞ!控えおろう!
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