第二章 葛藤 第6話
- 音 fade
in。兄弟たちの口論の音が大きくなる。
ユダ
:おい、ダン!お前の言い分は分からないでもないが、これはならん。ならんものはならんのだ。いくら何でも我々兄弟の長男であるルベン兄さんにこんなことをしていいと思っているのか?早く謝れ、早く!
ダン
:謝る?オレが謝る?オレに、あのルベンだかなんか知らん奴に謝れと言ってるんですか?ユダ兄貴、いくら同じ母さんから生まれた兄弟だからってかばう気持ちはわかるけど、これはちょっとやりすぎじゃありませんか?
ユダ
:何を言ってるんだ。誤解するな。私は母親が誰であろうとお前らを差別したことは一度もない。皆が血を分けたアブラハムとイサクとヤコブも息子だと思っている。だが、しかし、守るべきものは守らなければならないんじゃないか。理由はどうであれ、ルベン兄さんは我々の長子ではないか。それを肝に銘じるようにと言ってるんだ。
ナフタリ
:兄貴、長子って言いましたか?だから何だと言ってるんですか。長子がどうしたと言うんです。言っちゃあなんだけど、うちの父さんがその長子の権利のせいで、どれほど苦労したか、おわかりでしょう?生まれてくるときからエサウのかかとをつかんで出てきたヤコブ。一生、二番目という劣等感。長子でないという劣等感にさいなまれた父ヤコブ。父さんはいつでもスキさえあればエサウおじさんから長子の権利を奪おうとしたでしょう?だからあの日もおじさんが空腹を覚えて狩りから帰ってくるとき、ずる賢くもその前で煮物を煮たあげく、結局長子の権利を奪ったんです。それだけじゃない。それでも不安だったのか、イサクじいさんが二人の息子、エサウとヤコブに遺言を残すとき、
目がかすんでいたおじいさんの弱みに付け込んで、父さんはエサウの着物を着て、腕には毛深いエサウおじさんに見えるように子ヤギの毛皮を巻き付けて、エサウの受けるはずだった祝福を横取りしましたよね。その結果、父さんが得られたものは何でしたか。長い間、逃げ回っていただけでしょう。
ユダ :ナフタリ!今、お前は兄さんだけでなく父さんまでも辱めるのか。一体、どういうつもりなんだ!(立ち上がる)
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