ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第二章 葛藤 第9

シメオン :(レビに向かって)まあ、ちょっと待て。(ユダに向き直る)アダムとエバはそうだとしよう。じゃあ、その息子カインを見てみろ。自分の弟を殺したカインこそ利己的な人間じゃないか。

レビ :一体カインは、何でそんなことまでしたんすかね。

シメオン :お前はそんなことも知らんのか。アダムの息子であるカインとアベルが神にいけにえを捧げたんだが、弟アベルのいけにえは受けられ、自分のいけにえは神が受けなかったから、弟に嫉妬してアベルを打ち殺したっていうじゃねえか。

レビ :神は、何でまたカインが捧げるいけにえを受けなかったんすか?

シメオン :そんなの知るか。どうだ、ユダ。お前はどう思う?

ユダ :神がカインのいけにえをなぜ受けたのかは私にも分かりません。しかし、いくつか確かな点はあります。まず、神はアベルのいけにえを受けられたのには理由があり、また、同様に、カインのいけにえを拒否された理由も必ずあるということです。捧げ物から比べてみましょう。カインが捧げ物は、土地からの収穫物を捧げ、アベルは羊の初子の中で最も肥えたものを捧げたと聞きました。

レビ :カインは土を耕し、アベルは羊を飼っていたから、自分たちが得たものから捧げたんだろう?それのどこがいけなかったって言うんだ?

ユダ :私も細かい点については分かりません。ただ、三つのことは言えると思います。第一に、明確なのはアベルがカインよりも選りすぐりのものを捧げたということです。聞くところによると、アベルが捧げた物については、「羊の初子の中で最も肥えたもの」とされており、これは、アベルが神にいけにえを捧げるに際して気を使って選別したアベルの心を示すことだと言えるでしょう。アベルが神に対する捧げものをどれほど大切に思っていたかをあらわすものだと思われます。一方で、カインのささげた物は、ただ「土地からの収穫物」とだけとされています。特に選んだとかということは聞いたことがありませんでした。そして第二に、カインは理由を知っていました。アベルを殺す前に、神はカインに対して罪を犯さないようにたしなめたと聞きます。それからすると、当時はまだ神と人間との交わりが今よりもよっぽど近かったのかも知れません。それほどお互いに話せて、神が自分のささげ物を拒んだ理由を自らが知らなかったとしたら、間違いなくカインはそれについて神に尋ねたはずです。しかし、カインはそれについて何も言わず、ただ激しく怒り顔を伏せたそうではありませんか。これが本当ならカインはその理由を知っていたはずです。そして第三ですが、不思議なことにこの場面でアダムがいません。神にいけにえを捧げることは聖なる大事な行為であったはずです。今となっては、その時の明確な決め事に関する内容は分かりかねますが、当時ははっきりしていたはずです。それをアベルは守ったけれどもカインは背いた。そしてその理由をカインが知っていたなら、当然その父であるアダムも知りえたはずです。もし彼らがいけにえを捧げる前にアダムが監督をしていたなら、カインも正しいいけにえを捧げたでしょうから、兄弟の間でこのような悲惨な争いごとは起こらなかったかもしれませんが、不幸にもその場にアダムはいませんでした。これが最も大きな原因ではないでしょうか。当時の彼らが何歳だったかは知りませんが、あの事件の根本的な原因は利己的なカインにあったというよりは、アダムによる監督義務の不届きだったと思います。

シメオン :お前は、結局、これもまたアダムのせいだというのか。アダムってやつはろくな人間じゃあねえな。じゃあ、ノアはどうだ。ノアは箱舟を造って自分たち八人家族だけ乗り込んだんだろう?たくさんの動物も載せたというが、獣なんかよりも一人でも多く人間を乗せた方がよかったんじゃねえか?箱舟と建てるのに120年もかかったんだって?そんな時間があったら…。


ユダ :神が世界を滅ぼそうと決心されたのは120年前であり、洪水が起きた時、ノアが600歳だったのは確かですが、かといって120年もの間船を造ったとは思われません。

シメオン :それはなぜそうなんだ?俺は、神が120年後に世界を滅ぼすと言ったと聞いたぞ。

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