ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第三章 苦悩 第5

ある日、父が井戸を掘ったことがありました。ところが、近隣の者たちが来て、その井戸をよこせと言うんです。皆さんはそういう時、どうしなければならないと思いますか?そうです。戦わなければならぬ。争わなきゃならんでしょう。何があっても守り抜くべきでしょう。退けなければなりません。当たり前です。しかし、父はこれを差し出したんです。それも、ただでやってしまったんです。そして、別の場所で井戸を掘りました。そうしたら再び隣人の者たちが来て喧嘩を仕掛けます。その井戸をまたよこせと言ってきたんです。ここまで来たのなら、戦うだろう。堪忍袋の緒が切れるだろうと思っていました。ですが、父はまたもや渡してやったんです。苦労して、汗水流して掘った井戸をみすみす他人に一度ならず二度も渡してしまったんですよ。母はこれを見て、大変怒っていたのを覚えています。

私はそんな生き方はしません。自分のものを自分のものだと堂々と主張し、自分の権利はしっかり守りながら生きて行こうと決心しました。たたずまないつもりでした。とどまらないつもりでした。腕を伸ばし、手でつかんでみせるつもりでした。

それでは、何をつかまなければならなかったでしょうか。金?財産?そんなものは既にあります。欲を知らない父親が、あちこちに分け与えはしましたが、それでも十分すぎるくらいアブラハムは遺産を残しました。それに、金や財産を欲しがるというのも愚かで幼稚な話です。ましてや、神を信じる者としては、あまりにも小さすぎる欲です。それはまるで、あの木に付いた果物をむさぼるようなものしかありません。果物一つ?木の実一つ?そんなものなどは、すべてあの無知なエサウに上げてやっても惜しくはありません。私はその果物や実の付いた一本や二本の木なんかではなく、その木が植えられている森を、その森で満ちている山々のすべてを手に入れてやろうと思ったのですよ。

このヤコブは家の中に転がっている金やケチな家畜などで満足するような器ではありません。何よりも私が欲しかったのは、それ以外のすべて!父の持っているすべてを、私のものにしようとしました。

そのためには相続権を得る必要があります。わずかな差で二番目に出て来た、たったそれだけの理由で、すべてを失ってしまうわけにはいかんでしょう。他のものはいいとしても、エサウに相続権だけは奪われたくはありませんでした。神の系図を汚すことはできません。アブラハムの神、イサクの神につながる祝福の系図は、エサウの神ではない、何があっても、このヤコブの神にならなければならんのです。ただ、それだけが私の生きる道、私が祝福を受けられる道だったのです!

(咳き込む)

ただ、それだけが、私の目標であり、ただ、それだけが、神の祝福を受けられる道だったのです!

(再び激しく咳き込む)

(のどの調子を落ち着かせる。この時に備えて飲み水などを用意しておくのも可)

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