ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第三章 苦悩 第9

あなたが愛したエサウをごらんなさい。彼は神のご計画を知りません。知ろうともしません。アブラハムとの約束も知りません。神もエサウを憎んだはずです。彼のいる場所は荒れ果て、彼の相続地は獣の住処にでもなればいいんです。ヤコブは、エサウより強く、エサウがヤコブに仕えるべきなのです。神はこのヤコブを愛しています。このヤコブこそ神の約束を受け継ぐ人間だということが、なぜ、わからないのですか。なぜ、認めようとしないのですか。

すぐにでも父の前に駆けつけて私の思いをぶつけてやりたいと思いました。

すると胸の奥から、またもやあの声が聞こえてきたのです。

「たたずんではならぬ!とどまってはならぬ!腕を伸ばせ!その手でつかめ!」

母は私にこんなことを言い出しました。自分が呪われることになっても祝福は私が受けるべきだと。母は話をつづけました。父は目がよく見えないから、お前が代わりに祝福を受けろとのことです。

正直、困惑しました。考えてみてください。私は祝福は欲しいが、呪いはご免です。それまでの人生で、得をすることはしてきましたが、少しでも損をするかもしれないことは極力避けてきました。ですが今回、もし万が一これが父にばれてしまったら、祝福はおろか呪われてしまうかもしれません。私にはできません。無理です。このヤコブは人生を棒に振ることはできません。

ああ、もう五十年も経つというのに、未だにそのことを考えると、冷や汗が出てくるようです。いくら目がよく見えないと言えども、丈夫な体格に毛むくじゃらのエサウと、小柄でなめらかな肌の持ち主である私とでは、あまりにも違いすぎます。それに、なによりも私は、父の好きな料理を作ることができません。

しかし、母は強気でした。このことよって、呪いを受けるようになることがあれば、その呪いはすべて自分が受けるから、ただ自分の言うとおりにすればいいと言って聞きません。そして中からエサウの服を持ってきて私に着せて、体にエサウのにおいが付くようにしたあと、手と腕には羊の毛皮を巻き付けて毛が生えたように見せかけます。そして、私にヤギ二匹を連れてくれば、料理を作るから、それを持って行けと言うのです。

みなさん、こういうのを見ると、誠に持って女性の強さは想像を絶します。遠い昔、アラム・ナハライムの井戸べで十頭のラクダに水を飲ませていた当時の母の姿を見るようでした。

母が作ってきてくれたヤギの料理を持って父のいる部屋に入るとき、私の手は震えていました。頭と体は全身汗だくです。よく考えてみると体臭や腕毛は服と羊の革でごまかせますが、声はどうしようもないではありませんか。

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