ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第三章 苦悩 第21

このような作戦が功を奏して、兄は私を受け入れて下さいました。どれほど嬉しかったか知れません。私は残った財産を引き連れてカナンの地、シェケムに無事たどり着くことができました。これで私はやっと独立して立派な家庭を築ける思いました。平和で豊かな生活を送ることができると確信していたのです。これから神がアブラハムとイサクに約束された預言を成就する民族として繁栄し続けるだろうと信じて疑いませんでした。

ところが何ということでしょう。あまりにも酷すぎます。神はなぜこのような仕打ちをなさるのですか。神がレアを通して下さった愛娘のディナが、カナンの地でシェケムの若い族長というやつによって強制的に辱めを受けたという知らせを聞いて、私はこの世の全てが、夢も希望も何もかもが崩れ去るような心境でした。

すると、若い族長シェケムの父ハモルが私を訪ねて来て、ディナと自分の息子を結婚させてくれと頼むのです。以前だったら、自分の判断で行いましたが、今は息子たちも成長したので一存で結論を下すということがためらわれました。私は一度、野に出ている息子たちを呼び集めて話を聞くことにしたのです。愛する娘がこのようなことになってしまった以上、怒りがこみあげてくるのは当然ですが、だからといってこのように訪ねてきた彼の父に対して、どうこうすることもできないじゃないですか。

彼の父ハモルは、私たちの息子たちにも同じようにお願いしていました。自分の息子とディナを結婚させてくれることはできまいか、と。すると次男のシメオンが言います。自分たちの妹を連れて行くためには、あなたがたの土地に住んでいる男性すべて割礼を受けなければならないと言い出したのです。この言葉を聞いた三男レビも相槌を打ちます。そうすればディナを与えようと言うのです。

長男は勿論ルベンでしたが、彼はいろいろな面で力不足です。口下手でもあり、長男としての役割を果たすには荷が重すぎるような気がしていました。ですが、次男と三男が、このように強く言っものですから私もどうにもならなかった。その提案を聞いたとき、なるほど、これも一理あるなと思いました。しかし、そうではなかったのです。ああ、まさかあのようなひどいことを考えていようとは、まさかあのようなむごいことを考えていようとは……。(顔を両手で覆う)

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