ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第四章 疑問 第2

シメオン :あれ以前も同じだ。俺らの母さんがラケル母さんのせいで、どんなに冷たくされたか知ってんだろ?母さんがいくら親父のために尽くしても親父は、ただただラケル母さんだけを愛していた。俺らの母さんはずっと親父の後ろ姿だけを見てきたようなもんなんだよ。それがどんなに惨めなことなのか、お前にわかるか?

レビ :(声を落とし)兄さん、ベニヤミンのいるところで、ラケル母さんの話はしないことにしたでしょう。

シメオン :(咳払いをする)ふむ。俺だってな…。ふむ。それはそうと、俺がここにいるとき、どんな目に遭わされたと思ってんだよ。え?囚人の中でも凶悪な殺人犯たちの一緒の牢屋に入れられたんだぜ。窓もよ、こんな手のひら見てえに小さくてよ、真っ昼間も暗くてしょうがねえ。それでまた、においが臭くてよ。何だか死体の腐るにおいが立ち込めてんだよ。それだけじゃあねえ。朝から晩まで休む間もなくこき使われてたんだ。まったく、死ぬかと思ったぜ。

レビ :え?それって本当っすか?

シメオン :まだ続きがあるんだよ。あいつらは、何かってえと、けんかをしやあがってよ。毎日のように死体が運ばれてったぜ。もう、たまんねえよ。なんで俺があんな殺人犯たちと同じ監獄に入れられなきゃなんねえんだよ。ふざけんじゃねえってんだよ。

ダン :(ナフタリに向かって)ふん、自分だって殺人犯みたいなもんじゃねえか。シェケムではあんなにたくさんの人を手あたり次第、殺しておきながら善人面(づら)かよ。

ナフタリ :(ダン、口を手でふさぐ)しっ!聞こえたらどうするんだよ!

ダン :(口をふさいだ手を振り払いながら)おい、ナフタリ、オレが何か間違ったことでも言ったか?それだけじゃないだろう?血を分けたあの子にまで、あんなひどいことをしたんだろう、それが人間のすることか?

レビ :(遠くを見つめながら静かに、しかし冷たい声で)おい、ナフタリ。お前の兄さんには言葉遣いをちいと気を付けるように言っといた方がよさそうだな。でねえと、そのうち、てえ変なことになるかも知んねえからな。(最後には冷たい目つきでダンとナフタリの方を振り返り、睨む)

ナフタリ :(急いでダンを連れて右の隅に連れて行く)

ダン :なんだよ。放せよ!

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