第四章 疑問 第3話
ユダ :シメオン兄さん、お迎えに上がるのが遅くなって申し訳ありません。大変な思いをされたようですね。
シメオン :ま、ユダよ。俺だって事情は知ってるさ。いくら来ようとしても、あの親父が末を行かせるはずがねえよな。
イッサカル :それでもユダ兄さんが何度も頼み込んで、ようやく来ることができたんです。
ゼブルン :そうだよ。本当に大変だたんだから。ユダ兄さんじゃなかったら、何年間もこれなかったかもな。
ユダ :(後ろ振り返り)こら、お前ら、静かにしなさい。
レビ :いや、その通りだよ。事実、ユダがあの老いぼれを何日もの間、説得して、やっと来れたんっすよ。
ユダ :(レビを見て)兄さん、大したこと、ありません。
シメオン
:ああ、やはりそうだったのか。ユダよ。かたじけねえ。お前が歳は若くとも、俺たちの家の大黒柱だ。頼もしい限りだ。手間かけさせて済まなかったな。
ユダ
:いいえ、とんでもない。当然のことをしたまでです。それより、いくつかが気にかかります。いや、考えれば考えるほど納得のいかない部分があまりにも多いんです。
シメオン :うん?なんかあったんかい。
ユダ
:考えてみると、私たちが最初にここ、エジプトに来たときからおかしかったと言えます。外国から来た他の人は、一定の費用を支払うだけで、それに応じた食糧を得ることができると聞きました。
ルベン :そ、そうだよ。だから、ボクたちも前にお金を持ってきたんだよ。
レビ :あのねえ。ルベン兄さん、ちょっと黙っててもらってもいいっすか。ユダ、続けてみろや。
ユダ
:はい。ルベン兄さんの言葉通り、私たちも食料を得るだけのお金を持って来ました。ところが、突然兵士たちがやって来て、有無を言わせず、私たちを連れて行ってしまったんです。
ルベン :そう。そうだよ。あの時は本当に怖かったんだから。
レビ :(ルベンをにらみながら)あ、もう、まったく!(舌打ちをする)
ユダ :はい、私も気が動転して、考える暇もありませんでしたが、今になって振り返ってみると、どうしても、わからないことがあります。
シメオン
:そりゃあ、おめえ、わからんだろう。そもそも俺たちがどこかの国の回しもんだと疑われるようなことは、何一つしてねえのに、何で連れて行かれたんだって話だよな。
ユダ :はい、兄さん。もちろん、その点については言うまでもありません。しかし、それより、もっと不思議な点があります。
シメオン :もっと不思議な点?
レビ :おい、ユダ。その不思議な点って、何だ?
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