第四章 疑問 第5話
ユダ
:はい、レビ兄さん。(背後にある弟たちにも振り返って見る)そしてお前たち。私が一つ、問題を出しましょう。私たちを連行した兵士たちが総勢何人だったか答えられる者はいますか?
- 驚きながら兄弟たちかお互いの顔を見合わせながら首をかしげる。
ルベン :い、いや…。数えてる暇なんてなかったよ。本当に怖かったんだ。
レビ :ユダ、まさか、お前、あの時、その兵士たちの数を全部かぞえてたのか?
ユダ :いいえ。実は私も最初は慌ててそれどころがありませんでした。しかし、彼らに連れて行かれている間に、はっきりと確認できましたよ。
レビ :はっきりと確認できた?オレにゃあ、さっぱりわかんねえな。じゃあ、お前はあの時、何を見たって言うんだ?
ユダ
:私たち十人を連行していくとき、間違いなく一人当たり二人が付き添いました。ですから当時の兵士たちの数はちょうど二十人だったということになります。
レビ :そりゃあ、おめえ、オレたちが抵抗するかも知んねえからじゃねえか?それが妙だってえのか?
ユダ
:彼らは市場で私たちの挙動に不審を覚えて急に逮捕したのではなく、最初から私たちの兄弟を連行するつもりで、その数に合わせて二十人が来ていたということなんです。
シメオン :それは、つまり、計画的に俺たちを捕まえたってことか?
ユダ :はい、兄さん。おそらく、我々は、エジプトに入ってから、いや、あるいは、入って来る前から、彼らに監視されていたのかもしれません。
レビ
:おいおい、それはちょっと行き過ぎじゃねえか。だって、そうだろう。正直言って、オレたちが何だって言うんだよ。カナンの地に住む、ただの平凡な羊飼いじゃねえか。なのに何でオレらみたいな人間が監視されなきゃなんねえんだよ。
シメオン
:うむ。いくら何でも、それはお前の考えすぎなんじゃねえかな。俺らはただ、カナンの地から食料を買うために、ここエジプトに来ただけだろうがよ。なのに、俺らなんかを監視する必要なんてあるか?
ユダ :もちろんそうです。私も今朝まで私の考えすぎかもしれないと思っていました。しかし、今日、二度目に宰相に会った後、私の推測は確信に変わりました。
レビ :今日?さあ、別に大したことなかったろ?あいつがお前になんか言ってたか?
ユダ :いいえ。私が注目したのは、まさに今日、宰相に会ったとき、彼の警護をしている兵士たちです。彼らの姿を覚えていますか?
- みんな首をかしげる。
ユダ
:彼らの着ていた軍服は一般の兵士が着ているものとは異なります。より華やかで権威のある出で立ちをしていましたね。面白いのは、まさに私たちを連行した兵士たちが、それと同じ軍服を着ていたんです。
シメオン :何だと?じゃあ、我々を連行していった奴らは誰だと言うんだ。
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