第四章 疑問 第6話
ユダ
:私の考えが正しければ、我々を連行していったのは間違いなく、エジプト宰相直属の親衛隊です。
- ユダ以外の兄弟たちすべてに大きな声を出して驚く。
レビ
:お、おいおい…。こりゃあ、おめえ、話がどんどん大きくなりすぎやしねえか。オレたちって、言っちゃあなんだが、つまんねえ羊飼いだろうがよ。私たちがスパイか?回し者か?カナンの特殊部隊か?暴動でも起こしに来たのかってえんだよ。オレたちはただ腹が減って食料を買いに来ただけじゃねえか?
ユダ
:ええ、そうです。それだけです。しかし、私の考えを組み合わせてみると、彼らは私たちが最初にここに来た時、エジプトの地を踏む前から監視していて、計画的に私たちを連行したということ、そしてそのために動いたのは、普通の兵士ではなく、エジプト最高幹部が関わっている組織なのかも知れないということです。
レビ :ユダ。ちょ、ちょっと待ってくれ。(シメオンを見て)兄さん、ちょっとこっちへ。(シメオンを連れて舞台の左の方に行く)
- 照明は暗くなって、シメオンとレビだけスポットライトで照らす。
シメオン :うん?なんだ?どうしたんだよ?(シメオンに誘われて一緒に行く)
レビ :(少し抑えた声で)兄さん。正直に言ってくんねえか。
シメオン :なんだよ、突然を何を言い出すんだよ?
レビ :だからさあ、もう、正直に言ってくれって言ってるんすよ。
シメオン :だから何をだよ?じれってえなあ。
レビ
:いやいや。兄さんとこのオレの仲じゃないっすか。最初に捕まったとき、あの宰相がベニヤミンを連れて来るように言ったとき、兄さん、正直言って、何を考えていたんすか。
シメオン :なにって…。
レビ :ほら、黙ってないで…。
シメオン :うむ。そりゃ、まあ、あいつのことを…。
レビ :そうっすよね?オレもっす。あいつのことを考えました。今から十三年か十四年か前に、俺らはあいつを穴に投げ入れちまいやした。
シメオン
:うむ。ふう、まあ、あの時、俺らはまだ二十代そこそこの世間知らずだった。(遠くを見つめる)今振り返ってみると、あんときに、なんであんなことをしちまったのかと思えてならねえ。
レビ
:なんでって、あいつがなんか変な夢を見たとか何とか言ってたっしょ。何でしたっけ、その、夢の中で家族たちが畑の仕事をしていたら、自分の束が立ち上がってオレらの束が、自分のその束を囲んで拝んだって言うじゃねえすか。
シメオン :うむ…。
レビ
:それだけじゃねえよ。夢の中で太陽と月と十一の星々が自分にひれ伏したって言うんだ。ふざけるのもいい加減にしろってえ話っすよ。オレたちをコケにしやがって…。
シメオン :(咳払いをする)うむ。昔の話はもういいじゃねえか。(体を反対側に回し)
レビ :兄さん、そう簡単片付けられねえかも知んねえぜ。
シメオン :(レビの方を振り返る)何だと?お前、突然、何を言い出すんだ。
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