第四章 疑問 第8話
レビ
:ふう…。まあ、そうっす。オレもあれこれ考えて、結局そこで詰まっちまうんで…。あいつが万が一、ここエジプトに売られてきて、今まで生きているとしても、そしてまた万が一、オレたちがここに来たという事実をつかんだとしても、自分は奴隷、それも異邦人奴隷の分際で何もできやしないはずっすよね。でもねえ、どうも、わかんねえんすよ。
シメオン :ふむ…。(考えに耽る)おい、レビ。お前、一度ユダにちょっと聞いてみたらどうだ。
レビ :なにをっすか。あいつがどこにいるかってことをっすか?
シメオン
:さすがにいくら何でも、そこまでは知らんだろう。だが、ユダは、俺たちとは違う。何か考えがあるかも知んねえからよ、一度聞いてみようじゃねえか。
レビ
:(腕を組んで独り言で)もしかしてあいつが絡んでいるとしたら、ややこしくなるな…。(舌打ち)いや、生きていたって所詮は奴隷だ。オレらに何ができるってんだ。(シメオンを見て)じゃあ、兄さんも一緒に行ってみましょうぜ。
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シメオンとレビが舞台中央に一緒に移動する。照明が明るくなって、ユダとその兄弟たちが再び現れる。ユダはシメオンとレビを除く兄弟たちの中央に立っている。
- シメオンとレビが、ユダに近づく。
レビ :(ベニヤミンの方をちらっと見ては、静かな声で)なあ、ユダ。一つ、聞こうじゃねえか。
ユダ :(真剣な表情で静かに)ヨセフについてですか?
- シメオン、レビ、驚く。
- ほかの兄弟たち、反射的にユダを見る。
シメオン :え?お前、どうしてそれを…。
レビ :やっぱりお前もそれを考えていたのか。
ユダ
:はい、今、私たちに起こっているすべてのことを考えてみると、それぞれがバラバラで何一つ筋が通りません。あれもこれも別々です。しかし、ここで「ヨセフ」というカギを入れることによって、筋が明確になります。今、私たちに起こっているすべてのことは、申し合わせたように「ヨセフ」を指しているんです。
レビ :(少し大きくなったユダの声を聞いて慌てて人差し指を自分の口に当てながら)おい、しっ!声が大きい!
- 他の兄弟たち。「ヨセフ」という言葉に反応する。
アシェル :ヨセフ?(ユダの方を見る)
ガド :ヨセフ?(ユダの方を見ては、アシェルと顔を合わせてみる)
アシェル :(ガドを見る)ガド兄さん、今、ユダの兄貴が「ヨセフ」って言ったの?
ガド :(アシェルの方を見る)僕もそういう風に聞こえたけど…。
アシェル :(ガドを見る)何で今、ヨセフの名前が出てくるわけ?え?何で?
- ガドとアシェルの声 cut out。身振り手振りと口だけが動く。
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