ヨセフの再会
The reunion of Joseph
 

ホン・ソンピル (洪 性弼)
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「ヨセフの再会」
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第四章 疑問 第10

ベニヤミン :兄貴たちは気づかなかったらしいけど、僕は陰に隠れて一部始終を見ていました。本当は走って行って大声で叫びたかった。やめてくれと。兄さんを助けてくれと。お願いだから、助けてくれと…。

- 静かにすすり泣く

ベニヤミン :しかし、僕は本当に怖かった。兄貴たちが僕ら兄弟を殺すかもしれなかったから。遠い昔、アダムとエバの息子アベルがカインに殺されたのように、僕たち兄弟も殺されるかもしれなかったから。怖くて、できなかった。怖くて、怖くて、怖くて、怖くて…怖くてね。(突然ユダを見て大声で)本当に!本当に怖かった!

(静かにすすり泣く)

ベニヤミン :あの時から、僕は変わりました。何も見なかった。何も聞かなかった。しかし、どうして「ヨセフ」の名前が忘れられましょう。私は兄貴たちがうらやましかった。母もおられ、兄弟たちもいるでしょう。ダン兄さんとナフタリ兄さんを見てもうらやましかった。ガド兄さんとアシェル兄さんを見てもうらやましかった。自分を産んでくれた母と兄弟がいるということがどれだけうらやましかったのか知れません。しかし、僕にはいませんでした。ボクを産んでくれたラケル母さんは僕を産んですぐ亡くなりました。顔もわかりません。そしてヨセフ兄さんは、無残な姿で僕から離れてゆきました。

ユダ :ベニヤミン…。それは…。

ベニヤミン :いいえ。大丈夫です。兄貴たちもその時は若かった。でも、僕の孤独は、その時から始まりました。母さんの顔も知らない私をいつも守ってくれたヨセフ兄さんがいなくなり、僕はその後、僕たち家族の中で罪人のような気持ちでいました。息も殺して生きてきました。ユダ兄貴は、あの日以降、おそらく僕の口から「ヨセフ」という言葉が出てくることを聞いたことはなかったはずです。そうです。僕は怖くてヨセフ兄さんの名前も言えなかった…。怖くて…。本当に怖くてね…。だから寂しいとき、苦しい時は誰もいない所に行って名前を呼んでみました。ヨセフ…。ヨセフ…。誰かに聞かれないように、一度言うたび、周りを見回しました。そして再び呼んだんです。ヨセフ…。ヨセフ…。そういう時は、いつも顔をきれいに洗ってから家に戻りました。夏でも冬でも、何度も何度も顔を洗いました。僕の顔に涙の跡があるのを見つかったら、ひどい目に遭うかもしれないと思ったから…。

(ベニヤミン、長い溜息)

ベニヤミン :今まで本当に長かった。十三年、十四年という歳月が僕にとってはどれほど長かったことか。今は私も歳をとり、家庭を築くこともできました。子宝にも恵まれ、息子が十人もいます。私はもう寂しくない。家族があるから耐え忍ぶことができます。家族を励みに、一日一日生きてきました。

- ベニヤミン、ユダに近づいていく

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