第四章 疑問 第11話
ベニヤミン
:ユダ兄貴…。兄さんは…。ヨセフ兄さんは生きているんですか?そうなんですか?
ユダ :それは、私もまだ…。
ベニヤミン
:兄貴…。兄貴…。教えてください。お願いですから、この通りですから。本当のことを教えてください。(ユダにしがみつく)兄貴!ユダ兄貴!兄さんを!ヨセフ兄さんを!…。(その場でしがみついたまま座り込む)
- ナフタリは慌てて前に出て慰めながらベニヤミンを後ろに連れて行く。ナフタリ、自分とダンの間に座らせ涙を拭いてあげる。
- ユダ、頭を下げたままじっと立っている。
- シメオンとレビ、左隅にいたが、やや気まずそうにユダへと近寄る
レビ :だから、ユダ…。
ユダ :はい…。
シメオン :だから、お前も「ヨセフ」が引っ掛かるということなんだな?
ユダ
:確かなことは分かりません。しかし、今、我々を取り巻いている一連のことを考えるとヨセフを完全に排除することはできないように思えてならないんです。
シメオン
:うむ…。よし…。そうだとしよう。ヨセフが、今回のことにからんでいるとしようじゃねえか。すると、あれから、俺たちがいくつかの困難にぶつかったことも、やはりヨセフによるもんだと、お前は考えてんだな?
ユダ
:正直、今現在、ヨセフがどこにいて、今回のことに関して、どのようにかかわっているのか、私にも分かりません。しかし、逆に全く関係がないとすると、むしろその方がより不自然に思えるんです。
シメオン :うむ。だとしたらヨセフは…。だから、その…。ヨセフの俺たちに対する感情というか…。つまり…。(口ごもる)
レビ
:(シメオンを見て)ああ、もう、まどろっこしくて、見てらんねえや。(ユダを見て)よ、ユダよ。お前の言いう通り、もしヨセフが背後にいるとしよう。だとしたら、だ。これは結局、オレたちに対して良からぬ感情を抱いているんじゃねえかってことよ。だから、オレらのことを、どっかの回し者だと言ったり、シメオン兄さんを捕まえて置いたりしてるんじゃねえのか?おい、じゃあ、これ、もしかしたら…。
ルベン
:おい、ユダ、シメオン、レビ、何言ってるんだよ。ヨセフは死んでないのか?ヨセフが生きているのか?え?そうなのか?あの時、獣に殺されたんじゃないのか?オレは見たぞ、血に染まった服を、真っ赤な血に染まったあや織のヨセフの服を見たんだよ。それなのに、ヨセフは、ヨセフは、生きているのか?おい、ユダ、答えてくれよ。シメオン、レビ、き、君たちは、知ってるんだろう?ヨセフは、生きていて、生きているヨセフがボクたちを殺すのか?ラケル母さんがボクたちを殺すのか?ほら、これはラケル母さんの呪い!ヨセフの呪いだと言ったろ!ボクたちは、死ぬんだ。殺されるんだ。ボクたちは、みんな殺されるんだよ!(大声で泣く)
レビ :ちょっと、ルベン兄さん!(イッサカルを見て)おい、イッサカル!何してんだよ!早くルベン兄さんを連れてけよ!
- イッサカル、ゼブルンと共に慌てて出てきて、急いでルベンを慰めながら自分のところに連れて行く。
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