第四章 疑問 第13話
-
ユダを除く兄弟たち、雑談しながら再び荷物をまとめだす。ユダだけ立ちすくんで、考え事をしている。
ユダ
:果たして、そうでしょうか。(うつむいて独り言)計画的な連行、親衛隊の兵士たち、回し者扱い、ベニヤミンの要求、シメオン兄さんの人質、荷物の中に入れられた資金、兄弟たちの順序…。(急に頭を上げる)え?まさか!そんな!
レビ :(荷物をまとめながら、軽い感じで)うん?どうした?なんか、あったか?
ユダ :あ、いや、何でもありません。ちょっと突拍子もないことを考えてしまって。
シメオン :突拍子もないこと?なんだ、そりゃ?気になるじゃねえか。
ユダ :いや、いくら何でも、まさか。(手を振って見せる)本当に何でもありません。(荷物をまとめ始める)
レビ
:なんでい、お前らしくねえ。(笑う)でもよう。食料も充分な量を買えたし、このように、シメオン兄さんや、ベニヤミンも無事に連れて帰ることができたんだからよ、めでたし、めでたし、じゃねえか?。
シメオン :何、言ってんだ。散々待たせといたくせに…。ふん!
レビ :まあ、まあ、そう、固いこと言わんで。終わりよければ…っすよ。
シメオン :なんだ、この野郎。他人事だと思って、勝手なこと言いやがって!どんだけ苦労したと思ってんだ!(言い終わって、レビの方を見て笑う)
ユダ :(硬い表情で)めでたいのはもちろんですが、(荷物をまとめる手を止める)何だか、いやな予感がします。
レビ :いやな予感?なんだよ、縁起でもねえ。
ユダ :わからない謎があまりにも多すぎるんです。どうも、このまま終る気がしません。このままでは、終わらないような気がしてならないんです。
シメオン :おい、ユダ。変なこと言わねえで行こうぜ。もたもたしてたら日が暮れちまうぞ。
- ユダはじっとうつむいて思いにふける。
- 他の兄弟たちは、ユダの後ろで床に置いた荷物を取りまとめて出発準備をししている。
- 急に馬の蹄の音がうるさく響き渡る
声(使者):止まれ、者ども!止まれ!止まらぬか!
|