第四章 疑問 第14話
(右から使者と兵士1・2・3登場)
使者 :者ども!止まらぬか!
レビ :おい、ユダよ。お前が妙なことを言い出すから、こんなことになるんじゃねえかよ。
ルベン :ユダ!あの人、さっきボクたちを宰相の家に案内してくれた人だよ!
ユダ :(使者を見て)隊長殿、何事でしょうか。
使者 :この不届き者め。宰相閣下からあのようなもてなしを受けたにも関わらず、貴様らは恩を仇で返すつもりか!
ユダ :お待ちください。私どもは何のことだが全く思い当たりません。
使者
:黙れ!この泥棒猫のような者どもめ!閣下の特別な計らいでお許しを得たにも関わらず、恐れ多くも、エジプト宰相閣下のものを盗むとは何事か!貴様らが我らエジプトを見くびっていなかったとしたら、どうして、このようなあくどいができようか!
ユダ :隊長殿、私どもは何のことなのか本当に存じません。私どもがこともあろうに宰相閣下の物を盗むなんて。とんでもないことでございます。
レビ :なんかの間違いでしょう?オレたちが一体何を盗んだって…。
使者 :黙れ無礼者!それでもまだ白状せぬ気か!
ユダ
:隊長殿、何か誤解されているようです。宰相閣下の物を盗むなど、決してそんなことはありません。お金はむしろ私どもが献上させていただくために持ってきたではございませんか。それなのに、どうして恐れ多くも閣下の物に手を出すでしょうか。
使者 :よかろう。それでは今から、貴様たちの荷物を捜索し、その中から宰相閣下の物が発見されたら、どうするつもりだ。それでも白を切るつもりか!
ユダ
:承知いたしました。そんなことは万に一つもないでしょうが、もし私どもが持っている荷物を捜索し、その中から宰相閣下のもの出てきたならば、その荷物の持ち主は、死を免れますまい。そして、私どもは、永遠に宰相閣下の奴隷となりましょう。
使者
:大変な自信であるな。では、このように致そう。もし、そちらの荷物から宰相閣下のものが出てきた場合、その荷物の持ち主は、永遠に閣下の奴隷となろう。他の者は帰らそうではないか。よいな?それではこれから捜索を始める。(後にある兄弟たちに向かって)今から、自分の荷物を持ってこっちに来るように。さあ、貴様からだ!(ルベンを指す)荷物を持ってこっちに来い!ぐずぐずするな!早くしろ!
- 三人の兵士がそれぞれ自分の荷物を持って来たルベン、シメオン、レビ、ユダ…などを順に捜索する。
使者:(ベニヤミンを指す)貴様が最後か?荷物を持って来い!
- 兄弟は、それぞれひそひそ話をしたり、首をかしげたりしながら捜索する姿を見守る。
- ユダは捜索する兵士たちの姿を見ながら、考えに耽る。
兵士1:隊長!見つかりました!
- 兄弟たち、驚いて兵士の方を見る。
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