第四章 疑問 第17話
ユダ
:宰相閣下は私どもの兄弟であるシメオンを人質に取り、必ず末の者を連れてくるようおっしゃってから残りの九人を故郷の地に帰してくださいました。ですが、それでも老いた父は末の者を手放すということを長い間、拒み続けていました。それほど、末の者を愛していたのであります。しかし、時は流れ、かつて持ち帰った食糧は底をつきました。私たちは、父に再び懇願いたしました。食料が必要です。食糧を得るためには、エジプトに行くしか手はありません。ところが、エジプトの宰相閣下が末の者を連れて来なければ、食料はおろか、エジプトに入ることすら許さないと言われました。父は、お前たちが末の者を連れて行って、もしものことがあったら、もう生きていくことができない。これ以上、生きていくことができないと言いました。父と末の者の命は一つにつながっているようなものです。父は今年で百三十歳です。もし今度、末の者を連れて行かなければ、父は間違いなく生きていくことができません。死んでしまうでしょう。
- 照明が少しずつ明るくなる。
- ユダ、照明の明るさを見計らって、再び使者へと向きを変える。
ユダ
:このようなことを承知している私どもが、たとえ自分たちだけ無事に故郷に戻ったとしても、父が死ぬことになるとなれば、息子として、どうやって受け入れることができましょう。隊長殿、お願いです。お願い申し上げます。どうしても、その者を連れて行かれるというのであれば、私たちも一緒に連れて行ってください。
使者 :(しばらく悩む)よし。そこまで言うのであれば、よかろう。望み通りにしてやる。(兵士に向かって)おい。こいつらも、みんな連れて行け!
軍人1、2、3:は!(連行するために兄弟たちに近づきながら照明が暗くなる)
第四章幕。
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