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第五章 追及 第8話
おかげで陛下の前にお立ちになって、高い地位をお受けになられた後も、何の問題もなく職責を遂行されていくことができました。どこの誰があなたを異邦人呼ばわりをするでしょうか。どこの誰があなたに向かって奴隷だったと言えるでしょうか。どこをどう見ても、あなたは正真正銘エジプト人の中のエジプト人であり陛下の有能な臣僚の中の臣僚です。あなたの神は本当に備われる神です。アブラハムやイサクのための備えは知らなくとも、偉大なエジプトのためにあなたを備えて下さいました。ご自分にとっては言い尽くせないほどの苦痛と苦難の時であったことでしょう。でも私には中傷と妬みの化身となったあなたの兄たちや、あなたを買ったメディアンの商人、ポティファル家での奴隷生活、そして監獄生活までも、あなたの神がすべて備えて下さったかのように感じられます。
私は時々あなたの目を見て、多くのことを考えます。あなたの目には、聡明さが生きていました。両目に宿る透明感は以前と変わりません。むしろ年を重ねるごとに輝きを増していきました。その目を見るたびに、あなたが私のそばにいるという事実を確かめることができました。あなたの神への感謝があふれました。あなたのその目が私にどれほど大きな力となって下さったことか、どれほど大きな癒しになって下さったことか、どれほど大きな励みになって下さったことか知れません。
しかし、そんなあなたは…。そんなあなたは！あの日以来、お変わりになりました。あなたの兄弟がここエジプトへ食糧を得るためにくるという知らせを聞いてから、あなたは変わりました。あなたの顔もあなたの目も、あなたの心までも変わっていくのが私には見えました。
あなたは待っていましたのよね。彼らはカナンの地で、ここまでの食糧を得るために来るという事実をあなたは知っていました。この二年間、あなたはご自分の力を利用して、彼らがいつ来るかを密かに監視していたのです。だからこそ、彼らが来たとき、すぐに連れてくることができたのです。しかし、いくらあなたと言えども、何の罪もない彼らを罰することなどできませんでした。。そこで思いついたのが間者、スパイ、回し者いう罪でした。気を悪くなさらないでください。権力を持つ者にとって最も扱いやすい罪がまさしくにこの回し者という疑いだったでしょう。
過酷な飢饉の中にも二年間を耐えたのを見ると、あなたのお父様がどれほど多くの財を築いていたのか見当がつきます。でも、それ以上は難しかったのでしょう。
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