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第五章 追及 第9話
あなたは誰よりも彼らに会いたがっていましたが、いくら待っても彼らが動こうとする気配がありません。あなたは業を煮やしていたはず。おそらく彼らが来るのを二年もの間、昼夜を問わず待っておられたことでしょう。
彼らがこちらに向かってるいう知らせを聞いて、あなたは大変喜ばれたそうじゃありませんか。ところが突然、会わないと言われました。断じて会わないとまでおっしゃいました。私は最初、とても怪訝に思われましたが、すぐに分かりました。理由はただ一つ。彼らの中に、あなたのこよなく愛するベニヤミンがいなかったからです。
ああ、ベニヤミン、ベニヤミン、ベニヤミン…。あなたは彼らが来れば当然ベニヤミンも一緒に来ると思っていたことでしょう。ところが、見当たらない。何度確認しても彼らは十人でした。あなたは緊張しました。焦りました。ベニヤミンが生きているのか死んでいるのかすらわかりません。あなたは計略を練ました。
まず、あなたはシメオンを人質としました。ルベンでもなくシメオンを連れて行くように命じられたのです。普通だったら長男のルベンか、あるいは卑劣な人間だったら最も下の者を選んだことでしょう。あなたもそのように考えたはずです。だから、最初はルベンを人質にしようとしましたが、すぐに考えを変えシメオンを閉じ込めるように命じられた時、私は不思議でした。なぜあなたは長男のルベンでもなく、一番若いゼブルンでもない次男のシメオンをお選びになられたのだろうか。
理由は簡単です。カナンの地でのあの事件の時、長男のルベンは他の兄たちとは違って、あなたを庇ったのを未だに覚えていたからです。だからこそルベンではなくシメオンを人質にしたのです。私はその瞬間、すべてを悟りました。何をですって？それは、真実です。あなたの本心です。あなたは許していない。あなたは彼らを許していませんでした。血を分けたあなたの兄弟たちを許していなかったのです。
次に、兄たちに何を要求されましたか？あなたはシメオンを人質にして、末のベニヤミンを連れて来るよう命じられました。当然のことです。初めからそれがあなたの狙いでしたから。そして彼らから受け取ったお金を食料と共にこっそりと彼らの荷物の中に戻しておくようにされましたよね？まさか、これが慈悲深きあなたの配慮？いいえ、そんなはずありません。あなたは彼らから一銭も受け取りたくなかったのです。汚らわしいそのお金をすべてそのまま返しました。
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