練習問題『 ロケット　必要なものに絞って 』

【問題】次の文章を読んで、後の問いに答えよ。

　純国産のM5ロケットで太陽観測衛星「ひので」が無事、宇宙へと旅立った。
　太陽表面で大爆発が起きると、(a)テイ電になったり通信を混乱させたりして、私たちの生活に大きな影響を与える。(1)太陽がくしゃみをすれば、地球は風邪を引く。そんな太陽活動をくわしく調べて、宇宙天気予報にも役立てるという。
　M5ロケットの打ち上げはこれで最後になる。打ち上げ費用が約80億円とかなり割高なため、廃止されるのだ。
　M5は、故糸川英夫博士が半世紀前につくったペンシルロケットの流れをくむ日本独自の技術による中型ロケットだ。同じ流れのラムダロケットが70年、日本初の人工衛星「おおすみ」を打ち上げ、以来、宇宙の科学観測を支えてきた。
　M5の廃止で、日本のロケット開発の二つの大きな流れのうち、(2)一つが消えることになる。残る一つは、実用衛星用に開発された大型ロケットで、現在はH2Aである。
　載せる衛星が科学研究用と実用という違いばかりでない。前者は固体燃料で、後者は液体燃料。前者はすべて独自技術で開発され、後者は米国からの技術導入で始まった。開発を所管したのも前者が旧文部省で、後者は旧科学技術庁。
　所管官庁の主導権争いもあり、無用の対立も少なくなかった。
　両省庁が合併して文部科学省になったのに伴い、開発を担ってきた組織も03年に宇宙航空研究開発機構（JAXA）として統合された。(3)ロケット開発にも、そろそろ統合効果が表れていいころだ。
　その結果、M5のかわりに低コストの小型固体ロケットを新たに開発することになった。大型の主力ロケットH2A、官民で開発中の中型の液体ロケットGXと合わせ、大中小の3種類のロケットを持つ計画だ。
　米国や欧州並みの豪(b)カな品ぞろえだが、果たしてそこまでする必要性や財政の余裕があるのか、大いに疑問がわく。
　主力ロケットとしてのH2Aのほかにもう1種類、扱いが簡単で、小さい衛星の打ち上げに向く固体ロケットを持つことは必要だろう。それで足りない分は、ロシアなど外国に打ち上げてもらうこともできる。その方が安上がりでもある。衛星に応じて、(c)ジュウ軟に考えるべきだ。
　新型ロケットの開発は、［　Ａ　］。過去に失敗した例もある。GXの開発は難航しており、当初計画より5年遅れる見通しだ。宇宙開発委員会が計画を再評価することになっているが、開発中止も含めて見直す必要がある。
　ロケット技術も大事だが、(d)カン心なのは、衛星を使って宇宙空間を活用したり、科学観測をしたりすることだ。そのためにどんなロケットがどれだけあればよいか、納税者の視点で見極めなければならない。
　長年の研究と開発経費をかけた(4)M5ロケットの技術も、しっかり生かしてもらいたい。

『朝日新聞』2006年9月24日付
社説「ロケット　必要なものに絞って」より

【問１】下線部(a)「テイ電」と同じ漢字を含むものはどれですか。
　1．料テイで食事をする。
　　（　　　　　）
　2．命令を徹テイさせる。
　　（　　　　　）
　3．梅雨前線がテイ滞する。
　　（　　　　　）
　4．条約をテイ結する。
　　（　　　　　）

【問２】下線部(b)「豪カ」と同じ漢字を含むものはどれですか。
　1．話がいよいよカ境に入る。
　　（　　　　　）
　2．繁カ街で募金をする。
　　（　　　　　）
　3．書カに文学全集を並べる。
　　（　　　　　）
　4．寸カを惜しんで本を読む。
　　（　　　　　）

【問３】下線部(c)「ジュウ軟」と同じ漢字を含むものはどれですか。
　1．ガスが室内にジュウ満する。
　　（　　　　　）
　2．ジュウ横無尽に活躍する。
　　（　　　　　）
　3．交渉が難ジュウする。
　　（　　　　　）
　4．懐ジュウ策を練る。
　　（　　　　　）

【問４】下線部(d)「カン心」と同じ漢字を含むものはどれですか。
　1．マラソンをカン走する。
　　（　　　　　）
　2．カン胆相照らす。
　　（　　　　　）
　3．とんだカン違いだ。
　　（　　　　　）
　4．カン大な態度を示す。
　　（　　　　　）

【問５】下線部(1)「太陽がくしゃみをすれば、地球は風邪を引く」の意味として最も適当なものはどれですか。
　1．太陽上に発生した異変が、いずれ地球を汚染してしまうことになる。
　2．太陽上に発生した異変が、地球に潜んでいた異変を誘い出す原因となる。
　3．太陽上の爆発が、地球における活動や生活を壊滅させることになる。
　4．太陽が何らかの異変を起こすと、地球は大きな影響を受ける。

【問６】下線部(2)「一つが消えることになる」の理由として最も適当なものはどれですか。
　1．開発を担ってきた組織が、宇宙航空研究開発機構として統合されたから。
　2．今まで宇宙の科学観測に役立ってきたが、打ち上げ費用が高額であるから。
　3．必要性や財政のゆとりがあるのかどうか、疑問の声が上がっているから。
　4．太陽活動を調べ、宇宙天気予報に役立つ新型ロケットの開発が進んでいるから。

【問７】下線部(3)「ロケット開発」に対する筆者の考えとして適当でないものはどれですか。
　1．新型ロケットには開発経費が膨らむことが予想されるため、納税者の意見を取り入れ、計画の見直しをするべきだ。
　2．ロケット開発において、技術も大事だが、どんなロケットがどれだけあればよいかを考える必要がある。
　3．主力ロケットのほかに、小さい衛星の打ち上げに向く固体ロケットを持つことは必要だ。
　4．主力ロケットと固体ロケットを持ち、それで足りない分は外国に打ち上げてもらうという方法もある。

【問８】空欄［　Ａ　］に入る語句として最も適当なものはどれですか。
　1．案外簡単である
　2．決して難しくはない
　3．決して容易ではない
　4．全く不可能である

【問９】下線部(4)「M5ロケットの技術」の説明として最も適当なものはどれですか。
　1．純国産で、ラムダロケットと同じ流れをくむ、旧科学技術庁所管の固体燃料ロケットの技術。
　2．ペンシルロケットの流れをくむ、日本独自の技術による実用衛星用に開発された中型ロケットの技術。
　3．すべてが日本独自の技術で開発された、科学研究用衛星を載せるための中型固体ロケットの技術。
　4．故糸川英夫博士考案のラムダロケットの流れをくむ、旧文部省所管による日本独自の開発ロケットの技術。

【問10】本文の内容に合わないものはどれですか。
　1．中型液体ロケットGXは官民で開発中だが、その開発は当初の計画より5年遅れる見込みだ。計画の再評価を受けたうえで、開発中止も含めた計画の見直しをする必要があるだろう。
　2．太陽観測衛星「ひので」が宇宙へと旅立ったが、M5ロケットの打ち上げは今回が最後となる。70年の日本初の人工衛星「おおすみ」の打ち上げからM5にいたるまでの技術の流れは、宇宙の科学観測を支え続けてきた。
　3．ロケット開発をめぐり対立していた旧文部省と旧科学技術庁が合併して文部科学省になった。それに伴い、大中小の3種類のロケットを持つ計画を立てたことは、統合効果の表れであり、評価できる。
　4．M5ロケットの廃止で、日本のロケット開発の実用衛星用と科学研究用という二つの大きな流れのうち、一つが消えることになる。しかし、長年培ってきたM5ロケットの技術も、今後にしっかり生かしてもらいたい。